令和8年9月
去る5月29日、君たちはここ修道館アリーナに一堂に会し、1306名が姿勢を崩さず、坐禅の指導を受け、そして坐りきって、ギネス世界記録を達成しました。それまでの記録は817名だったということですから、これを大幅に更新したことになります。以来、学外の多くの方々から「ニュース、見ましたよ」「すごいですね」といった言葉をいただいています。あのとき司会進行を務めていた広報部長の糟谷先生は、学校説明会でも、記録達成の過程を裏話も交えながら、受験生保護者の方々に楽しくお話しされています。
この「世界最大の坐禅レッスン」への挑戦は、創立125周年記念の学内企画として、各クラスの代表生徒たちによる会議で発案されました。学園のマスコットキャラクターである「ざふまる」も、坐禅のときにお尻の下に敷く「坐蒲(ざふ)」をモチーフに、2019年の獅子児祭のときに当時の生徒がデザインしてくれたものです。学園の根幹に「禅」があるということが、ここに学ぶ生徒たちにとってのアイデンティティーとなっているということだと思います。
坐禅の要点は3つ、「調身」「調息」「調心」です。私たちは日常の中で、さまざまな自己中心的な思いにとらわれがちです。「もっとゲームがしたい」「この宿題が面倒だ」「あいつが気にくわない」、そうした感情にとらわれると、その思いは勝手に増幅してしまいます。それが、自分を苦しめたり、周りの人を苦しめたりすることにつながっていくことになります。
しかし、「今、ここ」の姿勢、「今、ここ」の呼吸を調えることだけに、「今、ここ」の心を使って、静かにただひたすらに坐っていると、そうしたとらわれを片付けることができます。だから、坐禅の感想を聞くと、多くの生徒が「スッキリします」と答えます。そうして、心の中の余計なとらわれがスッキリと片付いていったときに、しかしそれでもなお、心の中に残っているある大切なものに気づきます。それは何かというと、「感謝」ということです。君たちは、坐禅を通して、感謝を敏感に感じられる心を培っているのです。
今月の20日と21日には獅子児祭が開催されます。今年も、多くのお客様が来場してくださることと思います。その方々が、君たちがそれぞれに追究した“Think”を“Share”してくださいます。だからこそ、獅子児祭を成功させることができます。君たち自身も大きな達成感や充実感を味わうことができます。
君たちは、そのことに対する感謝を強く感じられる心を培っています。そこから、準備の過程で困難や失敗があっても、仲間と協力してそれを乗り越えていこうとする「勇気」、心地よい時間を過ごしていただけるようお客様のことを慮って準備をし、当日はやさしい言葉や和やかな笑顔で親切に対応しようという「思いやり」の心、「慈悲」の心が生まれてきます。
ギネスの日本記録認定協会のホームページには、世田谷学園が達成した記録に関するページがあります。そこには、こう書かれています。
「曹洞宗の宗門校として、日頃から仏教や禅の精神を教育の根幹に据える同校にとって、この快挙は単なる数字の多さを証明するだけのものではない。全校をあげて一つの目標に向かい、全員が静寂の中で自らの内面を見つめ直したという事実そのものが、創立125周年を飾るにふさわしい象徴的な歴史の一幕となった」
獅子児祭もまた、今年は創立125周年を飾る獅子児祭となります。君たち一人一人が感謝の心を胸に勇気や慈悲の心を存分に発揮する。それは、きっと「彩」(※2)豊かな獅子児祭の創造につながるはずです。
(2学期「始業式」式辞より)
※1 “Think & Share”…世田谷学園の教育理念
※2 「彩」…今年の獅子児祭のテーマ
