令和8年3月
「学は以(もっ)て已(や)むべからず。青は之を藍より取りて、而(しか)も藍より青し」という言葉があります。
木綿を青く染める藍染めという染色がありますが、そのためには、材料となる藍の葉を、大変な手間をかけて発酵、熟成させなければなりません。採取した藍の葉を乾燥させ、蔵の中で寝かせた後、水に湿らせながら撹拌する。すると発酵が始まる。それを数日ごとに混ぜ返し、寒ければむしろをかけ、約3ヶ月休みなく丁寧に世話をする……。それが古くから伝わる技法であり、こうして地道に手間暇をかけて発酵、熟成させるからこそ、元の藍よりも鮮やかな青が生まれるのだそうです。
人の学びも同じです。目の前の享楽にうつつを抜かすのではなく、このくらいいかと楽な方へ流されるのではなく、自らを律して、地道に手間暇をかけて、「明日をみつめて、今をひたすらに」精進努力を重ねていく。そこから、より鮮やかな明日が実現していきます。
「今、ここ」は二度とはありません。その「今、ここ」を如何に過ごすか。他者の脚下に向きがちな目を、自らの脚下に向けて、二度とはない「今、ここ」を大切に丁寧に過ごしてほしいと思います。
さて、今日は、君たちに報告しておきたいことが3つあります。
1つ目は、新校舎「白雲館」のことです。予定通り先月末で建設工事が終わり、今月はICTラボの内装工事、備品の搬入等が進んでいます。4月1日には竣工式を行いますが、これには昨年度から来年度までの3人の生徒会長にも参列してもらう予定です。学園のSTEAM教育センターとも言うべき「白雲館」で、君たちが創造性を発揮することで、それを自らの中に大きく育ててほしいと願っています。
2つ目は、昨日、昭和女子大学附属昭和中学校高等学校さんと世田谷学園との間で教育連携協定を結んだということです。昭和女子さんは女子校、本校は男子校、その2校の間に教育的な交流があるということは、お互いに大きなメリットがあります。これまでも英語部が昭和女子さんと模擬国連を行うなどの交流がありましたが、協定を結ぶことで、両校の教育の可能性をさらに広げていきたいと考えています。
3つ目は、発心館と観性館のことです。君たちのホームルーム教室が入っている校舎はL字型になっていて、現在、その東西に延びる部分を「発心館」、校章と“Think&Share”を掲げてあるブリッジでつながれた南北に延びる部分を「観性館」と呼んでいます。これを来年度からは、ブリッジよりも南側のL字部分はすべて「発心館」、ブリッジを含めて禅堂や図書館が入っている建物を「観性館」と呼ぶことにします。もし、「発心館」を東西に延びる部分と南北に延びる部分とで区別をする必要がある場合は、それぞれ「発心館(南棟)」「発心館(東棟)」という言い方をしたいと思います。
理由は2つあります。
1つは、建物と建物がブリッジでつながれていれば、それらは別々の棟と受け止められるのが一般的ではないかということです。
もう1つは、「発心館」、「観性館」という名称が誕生したときと現在とでは、状況が違っているということです。
現在のL字型の校舎になる前は、中学校舎と高校校舎が校地の南側と北側とに分かれていて、中学校舎に「道を求める心を発(おこ)す」という意味の「発心館」、高校校舎に「仏性を観る」という意味の「観性館」という名称がつけられました。しかし、現在の「発心館」には、高校生の教室も入っていて、元々の名称による区分けは生きていません。
来年度は、ホームルーム教室と選択教室の配置も少し変更するので、ブリッジよりも南側をすべて「発心館」とすることで、1年生から6年生まですべてのホームルーム教室が「発心館」に入ることになります。中学生だけでなく、何年生であっても「発心」──道心を発すことは大切なことです。流されることのない地道な精進努力は、「発心」から生まれます。
一方、「観性館」には禅堂や図書館があります。これまでコンピューター教室があったところには自習室ができます。「観性館」で自分自身を追究して、その名の通り、自らの「仏性」を観てほしいと思っています。
(「修了式」式辞より)
