令和8年1月

 令和8年、明けましておめでとうございます。

 「一年の計は元旦にあり」といいます。自ずと新鮮な気持ちになる正月は、目標をあらたにする絶好のチャンスです。こうありたいと願い、「明日」を思い描くこと、それはあらゆる達成の出発点となります。ただし、漠然と願っているだけで行動が伴わなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。仮に何かしらの行動を起こすことができても、やらない理由を見つけて自分への言い訳にしているうちに、いつの間にか失速してしまうこともあります。
 道元禅師は、「切に思うことは必ず遂(と)ぐるなり、強(こわ)き敵(かたき)、深き色、重き宝(たか)らなれども、切に思う心深ければ、必ず方便も出来(いでく)る様(よう)あるべし」と言われています。切実に願う心が深ければ、どんな困難があっても、必ずよい手段方法が見つかり、必ず実現することができるということです。ここで重要なのは「切に」、「切実に」ということです。漠然とではなく、切に願うからこそ、その心を深くするからこそ、実現に向けた方法を見つけ、具体的な行動を起こし、それを継続させることができます。その形を調えることで、切に願う心がさらに深くなるというプラスの相乗効果も生まれます。

 メジャーリーガーの大谷翔平選手が、高校1年生のときにマンダラチャートという目標達成シートを作成していたことはよく知られています。その中心に書かれていたのは「ドラフト1位、8球団指名」という具体的で明確な目標です。願いを切ななるものにするには、その願いが、単に成功したいというような漠然としたものではなく、具体的で明確なものであること、そしてそれを文字にして常に意識することが大切です。
 願いが切実ならば、達成に向けた方法も見つかります。大谷選手は、そのための要素として「体づくり」「コントロール」「キレ」「スピード160km/h」「変化球」「人間性」「運」「メンタル」の8つを掲げ、さらにそれらを達成するために1つの要素につき8つ、合計64の「今、何をすべきか」という具体的行動を明確化しています。「人間性」のための具体的行動の中に「継続力」を書いていますが、「ドラフト1位、8球団指名」という目標を必ず達成するのだと切に願ったからこそ、64もの具体的な行動を起こし、継続して習慣化することができたのだろうと思います。

 ヒンズー教には、こういう言葉があるそうです。
 「心が変われば態度が変わる。
 態度が変われば行動が変わる。
 行動が変われば習慣が変わる。
 習慣が変われば人格が変わる。
 人格が変われば運命が変わる。
 運命が変われば人生が変わる。」
心に切なる願いを発(おこ)せば、態度、行動、習慣……、そして人生までもが変わっていきます。宗教は違えど、成道会のときに話した「縁起の理法」にも適う一つの真理を表していると思います。

 今年は「午(うま)年」です。十二支はもともと植物の成長過程を表したものですが、覚えやすいように、そのそれぞれに動物が当てはめられています。「午年」の「午」は「午前」「午後」の「午(ご)」という字を書きますが、これに当てはめられている動物は音が同じ「馬」です。動物の「馬」は「馬力」という言葉があるように、「力強さ」や「俊敏さ」、「行動力」の象徴とされています。一人一人が切なる願いを発し、その実現を信じて、俊敏に力強く行動してほしいと思います。

(3学期「始業式」式辞より)