令和5年3月
本日で、令和4年度が修了となり、君たちは今、令和5年度に向けての節目を迎えています。
竹は節があるから、強くしなやかに成長します。もし、竹に節がなくて、空洞の円柱形だったら、簡単にしなだれてしまいます。同じように、人の成長にとっても節は重要な役割を持ちます。時の流れが用意してくれた、年度が変わるというこの折角の節目です。ぜひ強い節目にしてください。そしてそのためにも、一人一人が脚下照顧、自らの足もとを照らし顧みて、現在の自分を客観視してほしいと思います。
東日本大震災から12年目となる今年、被災地の一つ宮城県では、3月11日をはさんで3日間、自身も被災したプロスケーターの羽生結弦さんが、「希望」をテーマにアイスショーを開催して、華麗な演技で観客の心を揺さぶりました。
羽生さんは、プロに転向する前、オリンピックで2度金メダルに輝いていますが、それほどの力を培った背景には、習慣的に自分を客観視していたということがあります。
彼は、小学生の頃から「発明ノート」というものをつくっていたそうです。練習でジャンプが成功したとき、あるいは失敗したとき、体の各部分がどう動いていたかをノートに記して整理し、成功のために重要なポイントとなるのは何なのかを絞っていきました。そうやって、日々、自分を客観視していたからこそ、大きな成長を遂げることができたのだと思います。
「現在の果を知らんとすれば過去の因をみよ。未来の果を知らんとすれば現在の因をみよ」という言葉があります。現在の結果は過去の原因によるものであり、未来の結果は現在の原因によるものです。
自らの足もとを照らし顧みて、現在の自分がいかにあるのかを知る。そしてそこから、未来にこうありたいという自分を描いて、そのために現在の自分がいかにあるべきかを明らかにする。過去にどんなに変えたいと思う原因があったとしても、過去に戻って変えることはできません。しかし、未来の原因となる現在の自分のあり方は、「今、ここ」の自分の意志で決定することができます。
「念ずれば花ひらく」という言葉があります。ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出されます。現在の自分をみつめ、未来にこうありたいという一念を抱いて、君たちの目の前にある「今、ここ」を強い強い節目にしてください。
(「修了式」式辞より)