令和3年1月

 おはようございます。君たちも承知の通り、今日から1都3県に緊急事態宣言が再発令されています。以前のときとは違って、学校に対する休校の要請はありませんが、学園では、今日は始業を遅らせる措置をとりました。君たち自身も、自分が感染しないため、人に感染させないため、常にマスクを着用する、手洗いや手指の消毒を励行する、お互いのソーシャルディスタンスを保つ、換気に協力するなど、感染予防策を徹底してください。このくらい大丈夫だなどど思わずに、細心の注意をはらってほしいと思います。よろしくお願いします。

 さて、令和3年、明けましておめでとうございます。今年は「丑年」です。古くから動物の「牛」は、大変な農作業であっても最後まで勤勉に手伝ってくれるなど、人間の生活にとって重要な存在でした。その働きぶりから、丑年は、「我慢」や「これから発展する前触れ」の年になると言われているそうです。

 「我慢」とは、仏教に由来する言葉です。元々は、「七慢(しちまん)」と言われる七つの慢心の一つで、「我」という字に「慢」という字を書きますから、本来は「自分にこだわって、自分の方が相手より優れていると思い上がること」を意味していました。そこから転じて、「我を張る」、「強情」などの意味で使われるようになり、さらにそういう態度が人に弱みを見せまいとする姿に見えることから、「耐え忍ぶこと。忍耐」という意味で使われるようになったようです。現在、「我慢」と言えば、最後の「忍耐」という意味で使われることが一般的ですが、仏教には本来、この意味を表すものとして「忍辱(にんにく)」という言葉があります。「忍」は「しのぶ」、「辱」は「はずかしめ」という字です。

 人生には、さまざまな逆境が待ち受けています。逆境に出会うと、マイナスの面ばかりに目がいって、気持ちは落ち込みがちになります。しかし、2学期の終業式で話したように、どんなことにもプラスの面とマイナスの面の両方があります。だから、マイナスの面ばかりにとらわれず、プラスの面を探してそこに目を向けてほしいと思いますが、このとき、マイナスをプラスに逆転させてしまうというやり方もあります。与えられたマイナス面はマイナス面として受け止めながら、しかし、いつまでもクヨクヨしたり、ブツブツ言ったりしていないで、これをプラスに転換できるように、全力を挙げて努力をする、そしてやり抜くのです。そのときに、「忍辱」という心の態度が極めて重要になります。

 例えば、君たちは定期試験や模擬試験を受けます。試験の結果が出れば、自分の実力の程度をはっきりと見せつけられることになります。気持ちがひどく落ち込んでしまうような結果のときもあります。しかし、卒業した君たちの先輩の多くが異口同音に言っていたのは、その結果から自分の弱点を見つけて、一つ一つそれを克服していく努力をすることが大切なのだ、ということでした。努力によって弱点を克服すれば、その分だけ君たちの力は伸びます。マイナスをプラスに逆転させることができるのです。
 そのためには、面倒だと思うことにも挑んでいかなければなりません。自分がしなければならないことに対しては、たとえどんなに面倒に思っても、忍辱の心を発揮して、投げ出さずに全力を傾けて取り組んで、ついにはやり抜くのです。「面倒だから、しない」のではなく、「面倒だから、する」ぐらいの気持ちをもって挑んでいくのです。その習慣を身につけることで、忍辱の心が鍛えられ、君たちの人間としての根が深くなっていきます。その根が水や養分を吸収して、いつか美しい大輪の花を咲かせるのです。

 6年生の諸君は、いよいよ大学入試の本番が始まります。大学入試は他人との競争ではなく、自分の掲げた目標を達成する一つの関門、自分の内側にひそむ心の弱さと対決して自分を鍛える試練です。弱点があったとしても、それはその分だけ伸びる可能性があるということです。だから、落ち込むのではなく、精いっぱい弱点を克服するための努力をしてください。直前までぐっと伸びていくのが現役生の強みです。忍辱の心を発揮して、そして健康に十分に留意して、この自分との価値ある勝負に挑んでほしいと思っています。