令和元年11月

 ただ今、創立記念日の11月12日に先だって、学園創立118周年を記念する祝祷法要を営みました。

 

 文禄元年(1592年)、豊臣秀吉の時代に、当時は江戸の神田台にあった曹洞宗吉祥寺の山内に、後に「旃檀林(せんだんりん)」と呼ばれるようになった学寮が誕生しました。それが、世田谷学園の前身です。旃檀林は、江戸時代、昌平坂学問所とも並び称される学寮だったと伝えられています。旃檀林のあった吉祥寺は、明暦3年(1657年)のいわゆる明暦の大火で焼失し、その後、幕府の江戸再開発によって駒込に移転していますが、山門には現在も「旃檀林」と書かれた額が掲げられています。また、神田台当時、吉祥寺の門前町に住んでいた人々は、大火のあと、武蔵野に移り住むようになりました。それが現在、武蔵野市にある吉祥寺という町のおこりだということです。

 

 旃檀林は、明治に入るといくつかの変遷を経て、明治35年(1902年)に当時の私立学校令に準拠した「曹洞宗第一中学林」として、あらたなスタートを切ることになりました。学園ではこの年を創立の年としています。駒込の吉祥寺山内からこの三宿の地に移転をしてきたのは、大正2年(1913年)の9月のことです。この年の12月8日、成道会の日に、獅子児祭で大人気となった「ざふまる」くんは誕生しています。なお、移転開林式は11月12日に行われていて、大正13年(1924年)に校名を「世田谷中学」と改称したときに、この11月12日が創立記念日として定められました。
そして、昭和に入ると戦後の学制改革にともない、新制の「世田谷中学校高等学校」となり、さらに昭和58年(1983年)、私学であることをより明確にするために、「世田谷学園中学校高等学校」と校名変更して、現在に至っています。

 

 さて、世田谷学園の生徒に誇るべき呼称が2つあることは、君たちも承知のとおりです。
一つは、学園の前身の名称にちなんだ「旃檀林の獅子児」です。君たちはこの呼称のもと、「旃檀林に雑樹(ざつじゅ)なし、鬱密深沈(うつみつしんちん)として獅子のみ住(じゅう)す」の一節に込められた誇りと気概とを我が心としてください。
もう一つの呼称は「世田谷健児」です。「世田谷健児」の何たるかは、このあと歌う学園の校歌に明らかにされています。
昭和10年、1935年の11月、校地の北側に、当時としてはモダンな2階建ての新校舎が完成したことを記念して、校歌は制定されました。当時の学監・中島栄松先生の作詞、音楽の岡田志津麿先生の作曲によって完成した校歌は、12月に発表され、翌年の1月から、朝礼の際に歌われるようになりました。それが現在まで伝わっているわけですが、戦後まもなくから、長く一番しか歌われない時代がありました。その理由ははっきりしていません。ところが、私が高校3年生だった昭和57年、1982年の9月に突如として二番が復活しました。それは、本学園の教育を語るには、やはり一番と二番の両方が必要だったからです。

 

 仏教・禅には、天上天下唯我独尊──「人は一人一人がかけがえのない尊い存在であり、だれもがりっぱな人間になることのできる力をもっている」という人間観があります。それが、学園の教育の原点です。
校歌の一番にある「修めよ学べ、我等が智と徳」、これは、私たち一人一人がかけがえのない尊い存在であることに基づいています。だれもが尊厳性をもっている、だから、智と徳を修め学ぶのです。
一方、二番の「鍛へ(え)よ磨け、我等が身(み)と魂(たま)」とは、だれもがりっぱな人間になることのできる力をもっているという可能性を示しています。
また、「智」、「徳」、「身と魂」は、君たちが目指すべき人間像「自立心にあふれ、知性をたかめていく人」、「喜びを、多くの人とわかちあえる人」、「地球的視野に立って、積極的に行動する人」の3つにそれぞれ対応しています。
この2つのフレーズは、2つが揃ってこそ、本学園教育の原点と目的に通ずることができるのだということです。
さらに言えば、「智と徳」を「修め学ぶ」とは、「行学一如」を実践するということです。人間として自覚を求める生活、すなわち「行」によってこそ、学業が正しく習得(学)されるのであり、学業に専念(学)することが、そのまま人間としての理想の生活(行)につながります。「行」と「学」は一体です。だから君たちは、「学」とともに「行」を修めるのです。その「行」の基本の形が、「挨拶の励行」、「正しい服装」、「10分前登校」、「清掃整頓」という君たちの4つの実践目標です。
一方、「身と魂」を「鍛へ磨く」とは、「身心学道」を実践するということです。単に頭だけで観念的に学ぶのではなく、からだと心、身心を挙げて学ぶ。9月の獅子児祭では、準備から片付けまで、多くの生徒諸君が身心を挙げて臨みました。だからこそ、君たちの可能性が引き出された素晴らしい獅子児祭になったのだと思います。昨日の入試説明会でも、獅子児祭がとてもよかったと、目を潤ませていた方がいらっしゃいました。それほど、君たちの姿や対応に感動してくださったのだと思います。

 

 智と徳を修め学び、身と魂を鍛え磨くことを通して、君たち一人一人がそれぞれにもつ尊厳性と可能性を明らかにする。そして、これからの時代の地球社会に貢献する。それが、学園の理想とする「世田谷健児」の姿です。
このあとの校歌を、頭を上げ、胸を張り、腹に力を込めて、声高らかに歌ってください。