平成30年9月

 学園のモットーの一つは「明日をみつめて、今をひたすらに」ということです。難値難遇の不思議の縁で人として授かった生命、限りあるかけがえのない時間です。だから、ひとときも無駄にすることなく、いつどんなときも不断に誠心誠意の努力を重ねる。漢字2文字で表せば「精進」ということですが、それによって心が磨かれ、内にもつ「かけがえのない価値」を光り輝きます。
 私たちは、何かができるようになりたい、何かを成功させたいと思ったら、精進すること、努力を継続することが不可欠だと知っています。ところが目に見える効果がすぐに表れないと、気持ちが萎えて努力を放り出してしまいたくなることがあります。
 そのときに力を発揮するのが、1学期の終業式でも話した「忍辱」、「忍耐」という心の態度です。その内容は学園のホームページに掲載されているので、カナダ英語研修で終業式に出られなかった4年生にも読んでおいてほしいと思います。
 そもそも、努力を始めたからと言ってその効果は正比例のグラフのようにすぐに直線的に上がっていくわけではありません。飛行機が離陸するには滑走路を走る必要があります。その間は高度0です。それと同じです。しかし、「そのとき」がくればフッと上昇します。それなのに、その前にへこたれてしまう、あきらめてしまうというのはあまりにもったいないことです。「成功のコツは2つある。それはコツコツだ」という言葉があります。あきらめてしまいたくなるときに、その己に打ち克って根気よくコツコツと精進を重ねていく。それが「そのとき」をものにするコツです。ただ、一度上昇しても、また停滞状態に陥ることもあります。しかし、次の高みに上るためには、やはりコツコツと精進を重ねるしかありません。
 昭和の初期の頃、大相撲に綾川という力士がいました。昇進は決して順調ではなく、幕下で足踏みをしていた時期があったそうです。ただ幸いなことに、綾川に声をかけてくれた先輩がいました。大の里という、小さな身体で苦労の末に大関にまでなった力士です。大の里は言いました。「とにかく朝早く稽古場に出ろ。人に負けない時間に出ろ。出さえすれば、あとはどうにかなる」。この言葉を素直に受け止めた綾川は、その後関脇まで昇進したそうです。
 4月の朝礼で、禅の実践の特徴に「形」から入って「心」を究めていくということがあると言いました。朝早く稽古場に出る、その「形」をつくることが、綾川の稽古に対する「心」を進化させたのだと思います。
 あきらめさえなければ、保護者の方や先生の言葉、先輩や友だちの実践……、自分以外から自らの形や心を進化させるヒントやきっかけが得られることもあります。試行錯誤を繰り返すこともあります。しかし、それも貴重な雌伏の時間です。たとえ停滞状態に陥っても、コツコツと精進を重ねていく、その形と心を調えていく。それが、次の高みに上るためのコツです。(始業式でのお話から)