入試講評

平成29年度 中学入試講評

 

国語

国語1次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 22.8 77.2 34.4 65.6
問二 9.5 42.9 12.2 45.6
問三 33.3 55.0 36.7 53.3
問四 83.6 0.0 85.6 0.0
問五 20.6 61.4 26.7 67.8
問六 47.6 0.0 54.4 0.0
問七 76.7 0.0 77.8 0.0
問八 0.5 82.5 1.1 92.2
問九 0.5 85.7 0.0 90.0
【二】 問一 37.6 62.4 50.0 50.0
問二 36.5 45.0 48.9 37.8
問三 45.0 25.4 52.2 28.9
問四 77.8 0.0 87.8 0.0
問五 65.1 0.0 70.0 0.0
問六 42.9 27.5 52.2 30.0
問七 78.8 0.0 83.3 0.0
問八 32.2 0.0 44.4 0.0
問九 9.0 49.2 13.3 61.1
問十 0.5 33.9 0.0 47.8
【三】 漢字 9.9 88.9 12.2 87.8
【一】
出典は、ジーン・ストラトン・ポーター著、鹿田昌美訳の『そばかすの少年』による。自分の名前すら知らない孤児の少年「そばかす」は、木材泥棒から森を守る番人の仕事に就き、森の管理人であるダンカン一家とともに暮らすようになる。出題した本文はこれに続く箇所であった。生まれて初めて充実した生活を手に入れた「そばかす」は幸福を感じながらも、両親の存在を望んでもいる。ダンカンの奥さんはその「そばかす」の孤独に気付き、母親としての優しさを「そばかす」に与え、「そばかす」はそれによって救われるのだった。
問一は空欄に入る動詞を変化させて答える問題であった。「つくろう」・「ふかす」など、受験者にはなじみが薄いと考えられる語で正答率に差が出ていたようである。日常の会話や読書を通して語彙を増やすことを意識してほしい。
問八は本文の流れをもとに省略箇所を推測して答える問題である。登場人物達の間で何が問題になっており、それがどのような意味を持っているかを読み取れているかが問われている。後者について言及できているかどうかが合格者と受験者の部分正答率の差に現れている。
問九は本文序盤と終盤との変化を「幸福感」という言葉から考える問題。孤独を感じているとされる「そばかす」が「ダンカンの奥さん」に「母の愛」を感じていることを「そばかす」の描写から読み取りたい。
【二】
出典は、辻信一の『弱虫でいいんだよ』による。本文は人間と自然とを二元論的に考える現代社会のものの見方に対する批判である。人間と自然とを対立関係でとらえたり、上下や優劣の関係でとらえることから生じるさまざまな問題点について言及する。さらに、宮沢賢治の作品を引用しながら、人間と自然とが互いに受け入れあい、認め合い、交流を深める世界を紹介する。賢治の作品世界との比較を通して、現代社会で重要視している「比較」や「競争」の中に潜む危険な落とし穴に警鐘を鳴らす。
合格者と受験者との正答率が開いている設問をみてみる。まず、問一(空欄補入)、問二(語句の意味)の問題では、完全正答率ががそれぞれ12%ずつの開きがある。つまり、合格者はこれらの問いを確実に得点していることがわかる。次に問八(段落要旨の空欄補入)でも12%の開きがあり、他の設問と比較して合否が分かれた設問と言える。「ドングリのせい比べ」ということわざの意味を、通常使用される意味と宮沢賢治の使う意味とでどのような違いがあるかを問うている。次に問九、問十の部分正答率に注目して欲しい。それぞれ12%、14%の開きがある。これらは論述問題で、完全正答率はかなり低いが、合格者の多くは何らかの部分点を獲得しているのがわかる。逆に、不合格者の多くは白紙の答案が目立った。問一、二の語句の問題で確実に得点し、問九、十の論述で不完全でもよいので解答をすることが合格への第一歩と言えるだろう。
【三】
①「複写」の「複」、②「拾得」、④「研」、⑥「標識」、⑨「成敗」、⑩「運輸」の「輸」において誤答が多くみられた。特に①では「複」を「復」としたり、ころもへんではなくしめすへんで書いているものが多かった。また、②では「習得」・「収得」といった同音異義語との混同による誤答が見られた。文意を考えて適切な漢字を選ぶ必要がある。他には、⑥で「表識」・「標式」・「標織」などの誤答、⑨では「制敗」という誤答が多くあった。日頃から漢字に親しみ、正確に書けるようにするとともに、語彙力を増やしていってほしい。

国語2次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 96.1 3.9 98.0 2.0
問二 63.9 0.0 69.5 0.0
問三 67.1 32.0 70.5 29.5
問四 88.8 0.0 91.5 0.0
問五 1.6 30.0 1.6 36.7
問六 78.7 0.0 83.6 0.0
問七 72.2 0.0 75.1 0.0
問八 56.2 28.4 64.6 26.2
問九 52.1 45.0 59.0 38.7
問十 5.1 40.2 7.5 45.9
【二】 問一 14.4 74.0 18.7 69.8
問二 59.8 35.7 64.6 31.5
問三 45.0 42.2 56.1 37.7
問四 69.8 0.0 77.4 0.0
問五 37.1 19.7 43.0 22.3
問六 51.5 0.4 62.6 0.7
問七 0.6 58.8 1.0 66.2
問八 49.7 0.0 56.1 0.0
問九 27.0 0.0 34.8 0.0
問十 23.9 50.9 27.9 50.2
問十一 25.6 0.0 24.9 0.0
【三】 漢字 24.1 74.6 30.8 68.2
【一】
出典はミック・ジャクソン「10の奇妙な話」による。居眠りをしがちな少年が、ある日突然目覚めるかどうかわからない眠りに落ち、十年の月日の末に目覚めるも身体と精神の乖離により悩むという内容となっている。
物語は三人称語りで進むものの、精神状態が少年の視点から語られるため、物語自体の時間進行に対して少年の内的な変化が少ない。ゆえに、各場面における登場人物や少年の心情理解ができたかどうかで差がついた。選択問題については正誤が明確であったため、概ね解答しやすかったと考えられる。
問五の指示語の問題では解答に不足が多く、母親の言葉という要素は満たしているものの、断片的かつ不明瞭であるという内容が示されている解答は少なかった。また問十の記述については、テクストにおける空白を理由として問うたため、設定を逸脱しない限りにおいての自由な解釈が求められる問題に悩まされた受験生が多かった。テクスト中の「根拠」と空白を埋めるための「理由」を明確に区別し、それぞれの因果関係の整合性と問いとの対応を正確に記述する力が求められた。本文のストーリーや状況・心情把握にとどまらず、物語を解釈する中で主体的に読みこむ必要があったと言えるだろう。
【二】
出典は毛谷村英治「美術館建築と観光 アートへと変貌するイレモノ」による。美術館建築そのものがアートとして受容されるようになった近年の状況を、近代日本の美術館建築史を振り返るかたちで論じた文章である。美術館と美術作品がお互いに影響を与え合いながら変化していく過程を正確に読み取ることが出来たかどうかで差がついた。
問七の記述問題は、美術品の受容のかたちが変化したことにより「近代の芸術家たち」が受けた影響についてまとめる問題であったが、「美術品」と「展示空間」のそれぞれについてまとめる際「展示空間」という指定に引きずられて「建築家たちが受けた影響」について書いてしまっている解答が多く見られた。本文の正確な読み取りはもちろんのこと、設問が何を要求しているのかを読み取ることについても慎重に取り組む必要がある。そのほか、問三の語彙問題、問六の抜き出し問題で大きく差がついている。文章の内容をおさえつつ因果関係や同義表現を丁寧に追っていくことが大切である。
【三】
①「警察官」の「察」、②「断腸」、③「勤務」の「務」、④「穀物」の「穀」、⑤「門」において誤答が多くみられた。特に①では「察」の「又」を「犬」で書いているものが多かった。また、②では「団長」としている誤答が非常に多く見られた。⑤の「笑う門には福来たる」は「角」としている誤答が多かった。漢字を覚える際は、ただ闇雲に暗記するのではなく、言葉の意味と漢字の意味との関係を意識する癖をつけたい。また、②と⑤とでは慣用句・ことわざの知識も問われている。意味の分からない言い回しは、すぐに辞書で調べる習慣を身につけてほしい。

国語3次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 12.4 66.1 19.4 65.3
問二 33.9 0 44.4 0
問三 49.1 44 51.4 41.7
問四 13.8 84.9 29.2 69.4
問五 45.9 0 51.4 0
問六 56 35.8 56.9 33.3
問七 5 26.1 6.9 38.9
問八 2.3 60.6 4.2 73.6
問九 4.1 79.4 6.9 84.7
問十 4.6 41.7 9.7 43.1
【二】 問一 41.3 42.7 41.7 48.6
問二 64.2 0 62.5 0
問三 15.6 48.6 23.6 45.8
問四 33.5 0 30.6 0
問五 34.9 0 48.6 0
問六 8.3 44 16.7 48.6
問七 28 0 29.2 0
問八 3.2 52.3 2.8 69.4
問九 31.7 0 37.5 0
問十 19.7 0 18.1 0
【三】 漢字 1.8 97.7 2.8 97.2
【一】
出典は、皆川博子の「水色の煙」(『結ぶ』所収)による。母親の仕事が忙しくて実家に預けられることになった「あなた」と、その母親の妹である「わたし」の交流が描かれている。具体的な出来事というよりも、「旅の魔術師」と「折紙」にまつわるエピソードによって話が進んでいくところが特徴的な作品だ。
中心となる少年が「あなた」と二人称で表現されていることで、読みづらく感じた受験生も多かっただろう。そこで、人物関係を整理する設問(問四)と、関係性のあり方を問う設問(問二・八)を置いた。問八では、「わたし」とのつながりを実体的な行為でしか表現できていない解答が多かった(「お話をしてくれる」や「折紙を折ってくれる」)。「わたし」は「あなた」の理解者であり、(母と一緒にいられない)孤独をひととき忘れさせてくれる存在であるということが重要である。
「旅の魔術師」のエピソードは、寓話としての理解(問三・六)と、「あなた」と結びつけた解釈(問五・七)の二つの方向から問うた。「わたし」の抱いた印象を手がかりにすることができれば、「魔術師」と「あなた」を結びつけることができたかと思われるが、この点が難しかったようだ。
「折紙」のエピソードは、「あなた」の願望にまつわる設問である(問九・十)。問九については、三つの「幻影」を「あなた」の「見たいもの」と考えた場合に、それらにどのような共通点が見られるかが解答のポイントとなる。これまでの設問を通じて「あなた」の孤独が捉えられていれば、これがヒントになったかと思われるが、そもそも共通点を見出すということができていない解答が多く見られた。その一方で、情報整理として三つの「幻影」を正しく指摘できている解答には得点が与えられ、合否に影響のある得点差を生む一因となっていた。また、問十は解答者が自由に発想する設問だったが、黒い折紙で折る理由と、それを燃やすことの意味の両方に言及できている解答が少なかった。
また、問九では「何がどうする様子」かという問いに対応していない解答や、問十では「黒」ではない折紙に関する解答など、設問をきちんと読んでいないと思しき解答も少なからず見られた。本文だけではなく、設問も落ち着いて正しく読むようにしたい。
【二】
出典は、鳥原学の『写真の中の「わたし」』による。出題箇所は、ファッション写真の作られ方とそれが人々にどのような影響を及ぼしているかについて述べた部分である。ファッションが自己演出の上で重要性な意味を持っていることを確認し、その規範がどのようにして人々の中で内面化されていくかというメカニズムを、ファッション写真の作られ方を取り上げて説明していく。そして、それらファッション写真が持つ問題点を指摘したのち、現状の解決策について考えていく、という内容である。本文採択の意図は、受験生が日常生活の中で知らず知らずのうちに経験している規範の「内面化」という問題について考えるきっかけになってもらえたら、という気持ちからである。特に広告産業など、発信者や権力の側に都合のよいような価値観や規範を刷り込んでくることも多いので、そのあたりに対して自覚的になってほしい、というメッセージも込めたつもりである。
問四の「誤読される」とは、「(自分の意図とは異なり)間違って理解される」という意味。ウの選択肢は内容を限定しすぎである。問六の(1)は、筆者は価値観を内面化することに対し、「社会で問題なく生きていくために教育上必要」と述べているので、イが正解となる。(2)のア、イ、ウについては内面化と関連が深く、エは本文に「ファッションに興味がないと思っている人でも、自覚せずにメディアの情報を受け入れて服装を決めている」とあるので、消去法的にオが正解となる。問八には空欄が二つあるが、それらが意味的に論理性を持っていないといけない。解答作成の際に、本文中から根拠を探したのち、適切な形にしてから答えるというプロセスを意識しよう。後者については問いにきちんと対応しているか? を考えることが大切である。
本文読解に関する問題の選択肢を選ぶ際には、まずは本文との対応をしっかりと吟味することが大切であるが、本文全体の持つ方向性についてもしっかりと考えたいところである。細部を細かく丁寧に読んでいく力と、全体を俯瞰して理解する力の両方が求められる。
【三】
②「権益」⑤「送辞」、特に⑤の出来が良くなかった。⑤は「相似」、②は「権」を「検」と書く誤答が多かった。おそらく語彙として定着していなかった受験生が多かったのではないだろうか。⑦「晩成」は「成」を「生」「盛」と書いているものがあった。一方、①「述(べる)」、④「頂(い)」、⑧「延期」の出来は良好であった。単語の持つ意味を考えながら、総合的な語彙力を養成してほしい。また、字のバランスにも普段から気を配ろう。