入試講評

平成28年度 中学入試講評

 

国語

国語1次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 91.6 0.0 95.2 0.0
問二 45.8 0.0 48.2 0.0
問三 24.4 51.8 26.5 50.6
問四 30.3 18.5 31.3 19.3
問五 31.7 0.0 32.5 0.0
問六 24.4 53.6 32.5 51.8
問七 38.1 0.0 50.6 0.0
問八 63.1 0.0 66.3 0.0
問九 1.2 43.4 1.2 48.7
【二】 問一 7.1 35.1 10.8 47.0
問二 17.9 0.0 22.9 0.0
問三 28.6 0.0 34.9 0.0
問四 41.1 31.5 42.2 28.9
問五 60.1 0.0 69.9 0.0
問六 4.2 38.1 4.8 42.2
問七 66.1 29.2 68.7 30.1
問八 58.3 0.0 66.3 0.0
問九 13.7 0.0 14.5 0.0
問十 0.0 50.0 0.0 55.4
【三】 漢字 22.0 78.0 27.7 72.3
【一】
出典は、大江健三郎の『二百年の子供』による。本文は、過去への時間旅行での失敗を引きずっている「朔」が友人や父親などからの励ましによって立ち直り、未来に向かって今を生きていく覚悟を決める場面である。周囲の人物の言葉や行動に触れた「朔」の心情の変化を整理しながら読めたかどうかが本文理解の差につながったと考えられる。やや登場人物が多く、「朔」とそれぞれの登場人物との関係性を整理するのが大変だったかもしれない。
受験者平均と合格者平均とで特に差が出たのが、問六・問七であった。問六は「朔」の動作から心情を読み取る問題である。心情の理由となっていることがらと、「にらむようにした」の「にらむ」のニュアンスとを正確に読み取れているかどうかがポイントとなる。どちらか一方のみで考えてしまうと、二つ正解することができなかった。問七は「朔」の「われながらのんき坊主のくせに」という言葉の意味と、「気の毒」の内容とを把握できているかどうかを問う問題である。選択肢前半部分の「のんき坊主」の説明だけでは解答を一つに断定することができないので、「気の毒」の内容を説明している選択肢後半部分を冷静に吟味する必要があった。
問九は全体を俯瞰してまとめる問題で、情報整理能力が問われた。物語の流れは漠然と読んでいても頭に入ってこないので、問題に取り組む際には、登場人物の心情の変化とそのきっかけをメモにしてまとめる訓練を通して、構造を把握する力を培ってほしい。
【二】
出典は、松岡享子の『子どもと本』による。著者はアメリカに渡って現地で学んだのちに帰国、自ら子どものための図書館を設立した人物で、この本では子どもと本の関わりについて書かれている。本文は本を選ぶという行為について述べられた部分。本を選ぶのは決して簡単なことではないが、覚悟と見識、そして何よりも愛情を持って“選ぶ”ことの大切さが説かれる。本文中で書かれている、「選ぶということは、ものには質の違いがあることを認め、その作り手を応援することである」というメッセージ、また多感な年頃に良い本と出会ってほしいという思いも込めて本文を採択した。やや本文量が多く、情報を適切に整理していくのが大変だったかもしれない。全受験者と合格者で差が出たのは問一、問五、問八というあたり。それぞれ語彙問題、読解問題、文の修飾関係や多義語についての問題だったので、言語力の基礎がしっかりと確立されている受験生ほど解答率が高かったと言えるのではないだろうか。問三は指示語の問題だが、オの誤答が多かったのは残念。傍線部以降、「その議論は、子どもの本にも当てはめられ……」と続くので、子どもの本だけの議論ではない。問九は「警策」の意味がポイント。坐禅のとき、修行者の肩を打つ道具である警策は、ここでは「自分たち図書館員に対する厳しい問いかけやメッセージ」というくらいのニュアンス。なのでその厳しさについて触れているオが正解。イの誤答が多く、「核心に触れるような大切な気づき」という一節が本文中の表現と似ていたので選んだ受験生が多かったのではないかと推測されるが、その「大切な気づき」が説明されているのがオである。本文の表現が具体的に言い換えられていることもあると理解した上で選択肢を吟味しよう。最後になるが、記述問題の対策としては、抜き書きではなく言い換えや複数の箇所をまとめる能力が必要なことを理解した上で、過去問や類問に挑戦してほしい。その際、文章読解の力や言語感覚が出来を左右するのは言うまでもないので、普段から読書習慣をつけることや幅広い好奇心を持つことを心がけてほしい。
【三】
①「立候補」の「補」、④「金貨」の「貨」、⑦「採血」の「血」、⑩「銭湯」の「湯」において書き間違えや同音異義語との混同による誤答が見られた。日頃から漢字に親しみ、正確に書けるようにするとともに、語彙力を増やしていってほしい。

国語2次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 89.9 10.1 91.9 8.1
問二 41.2 0 45.8 0
問三 20.1 35.4 22.0 36.3
問四 90.9 6.1 93.6 5.1
問五 59.0 22.2 63.4 19.3
問六 60.7 0 64.1 0
問七 34.2 0 40.0 0
問八 55.0 0 61.7 0
問九 1.2 29.5 1.4 32.5
【二】 問一 54.8 45.2 58.3 41.7
問二 12.4 84.3 13.6 84.7
問三 75.2 21.8 81.7 16.9
問四 43.1 39.1 49.5 38.0
問五 63.5 0 71.9 0
問六 7.5 54 8.5 59.7
問七 3.3 74.5 4.4 75.9
77.5 0.0 82.0 0
問八 0.5 51.8 0.7 58.6
【三】 漢字 67.0 32.8 72.9 26.8
【一】
本文は、マイケル・ドリス著、佐々木光陽訳『森の少年』による。モスの父親が収穫祭の食事に見知らぬ人たちを招待したことで、モスが父親とけんかした翌日の場面である。他人と食事をすることに抵抗を覚え、その怒りを招待した父親に向けるモスと、空腹の人を見捨てておけない父親とが、互いに相手の理解と譲歩を求めていくが、結局最後まで歩み寄れずに話は終わる。モスと父親と二人の心情をどれだけ把握できるかが解答に求められる。
問三~問五の3問を解答していく中で、二人がどのような状況にいるかを正確に掴んでいきながら、問六~問九の4問で二人の心情を考えて解答していくと、高い正解率が得られる。心情を考える設問の中で、問六のようなモスの心情(子供かつ主人公の視点)を捉えるものは比較的できているが、問七や問九のような父親の心情(大人かつ他者の視点)を捉えるものは正解率が低くなっている。特に、問九は、傍線部そのものはモスの視点であるが、解答として求められているのは父親の思いである。また、その思いは、父親からモスへの遮断ではないことを父親からモスへの最後の呼びかけの言葉から汲み取らなければならない。
物語を読む上で、特定の登場人物に偏った読み方をせず、登場人物すべての心情を客観的に追っていく読み方を練習すると、状況も心情も正確に把握できるようになるだろう。また、選択問題もそうだが、記述問題においても、根拠となる表現が必ずあるはずなので、自分勝手な憶測による解答ではなく、本文の表現から考えられる解答を作り出せるようにして欲しい。
【二】
〔要旨〕美意識と生活との関わりについて論じられた文章。ものが潜在的にもっている美を開花させるためには、ものが置かれている空間を簡素にし、それを感じる人間の感受性を高めていく必要がある。
〔講評〕本文自体の難易度はやや難である。問いにレベル差をつけたことと、論述問題では答えやすさを考慮して幾つかの工夫を施したので、得点はし易かったと思われる。48点満点で受験者の平均点は28.2点、正答率は58.8%と、全体としては良好なできであった。各設問を「語句に関する問題」、「段落ごとの論旨」(選択問題)、「論述問題(記述)」と分類して、簡単に講評をまとめる。
●「語句に関する問題」
問一 副詞の選択 問二 語句の意味(「堪能」「何の変哲もない」「脱皮する」) 大変できが良かった。
●「段落ごとの論旨(選択問題)」
問三 戦後の日本人についての要旨 問四 ものを捨てることについての要旨 問三、四とも大変できが良かった。問五 本文後半の要旨 まずまずのできであった。問三~問五については、受験者全体と合格者との平均点に差が見られる結果となった。
●「論述問題(記述)」
問六 「簡素に極まった環境」=「無駄なものを捨て(た空間)」がもたらす効果についての論述問題。まずまずのできであった。問七(Ⅰ)箇所説明の論述。直前の文章をまとめれば良いので、部分正答率は高かった。問八 文章全体の要約。受験生の実力を問う問題として出題した。大問二の最後の問題なので、ここまで解く前に時間切れになってしまったものも見られた。記述がされているものに限って言えば、約半数のものが部分点は取れていた。
【三】
①「比類」の「比」、③「縮尺」の「尺」、⑤「責任」の「責」において誤答が多く見受けられた。特に①の「比」を「否」や「批」、③の「尺」を「釈」としてしまっているものが多くあった。いずれも語の意味が分かっていれば防ぐことができる間違いである。傍線以外の場所にも目を通し、意味を考えながら書く癖をつける必要がある。

国語3次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 26.5% 73.0% 37.5% 62.5%
問二 20.5% 65.4% 28.4% 69.3%
問三 82.2% 0.0% 87.5% 0.0%
問四 12.4% 0.0% 19.3% 0.0%
問五 70.3% 0.0% 88.6% 0.0%
問六 11.9% 43.8% 18.2% 55.7%
問七 3.2% 53.5% 6.8% 70.5%
問八 13.6% 41.3% 23.9% 51.1%
【二】 問一 62.2% 33.0% 64.8% 30.7%
問二 33.0% 4.9% 37.5% 2.3%
問三 82.7% 0.0% 89.8% 0.0%
問四 14.1% 26.5% 21.6% 31.8%
問五 56.8% 42.2% 68.2% 31.8%
問六 64.3% 0.0% 79.5% 0.0%
問七 12.4% 17.3% 17.0% 19.3%
問八 72.4% 0.0% 83.0% 0.0%
問九 0.0% 7.0% 0.0% 8.0%
問十 33.0% 46.5% 39.8% 46.6%
【三】 漢字 19.5% 79.5% 26.1% 72.7%
【一】
【要旨】
ある事件に巻き込まれ、塞ぎ込んでいる「美星」とそれをなんとか励まそうとする「奥さん」のエピソード。
梶井基次郎の小説『檸檬』になぞらえて、「奥さん」は「美星」にあるいたずらを施す。そのいたずらにまつわる謎を解くことで「美星」の心に変化が起こり、「美星」は立ち直ろうと決意する。
【読解のポイント】
「奥さん」のいたずらにまつわる謎を本文中の情報からまとめることと、それによって生じた「美星」の心情変化を本文中の語句を用いてまとめる。
【講評】
語句の問題は、慣用句を中心として、文中に適合する形に変える必要があったが、基本的によくできていた。
「目を反らす」「目を凝らす」の誤答が散見された。
記述に関しては、上記の読解ができたかどうかが得点につながる。内容が把握できた受験生は部分点を獲得している。あとは、言語処理、情報処理のスキルの差で得点分布が広がった①規模の「模」、④唱えるの「口」、⑤奮いの「大」、⑦「除幕式」の「除」「幕」において誤答が多く見られた。①と⑦は主に同音異義語による間違いであり、④と⑤では書き間違いや覚え間違いと考えられる回答が多数を占めた。漢字学習の際に、他の漢字との差異を正確に学習する必要があると言えるだろう。。
【二】
出典は荻上チキ『未来をつくる権利―社会問題を読み解く6つの講義』による。本文は、「病気である権利」という観点から、健康・健常者であることを前提に作られている社会のあり方に疑問を投げかけている。
そもそも、ここで主張されている「権利」は、弱者を救うためのものであるというのが前提である。であれば、弱者がどのような状況に置かれているか、というのは、本文に書かれていなかったとしても、前提として踏まえなくてはならない条件となる。設問を解く、ということを意識しすぎて、常識的に考えておかしい解答にたどり着いてしまっては元も子もない。特に問四において、この点が顕著にあらわれていた。
同じことは問七においても言える。実際の自分のこれまでの読書体験に照らし合わせて考えることができれば、おかしな結論にはならなかったはずだが、受験生の七割が全く関係のないことを書いていた。
また、今回の設問では、意味内容ごとに三つの部分に分けて、本文を提示した。それぞれに中心的な話題があり、特に二つ目と三つ目の部分では、その内容が捉えやすいように具体例も挙げられている。にもかかわらず、三つ目の部分の中心的話題を財源の問題だと考えた受験生がほとんどだった。三つ目の部分は、障害者に対しても「文化的な最低限度の生活」を保障すべきだというのが中心的な話題で、財源における議論がその問題点を覆い隠してしまうことが批判されている。にもかかわらず、問九ではほとんどの受験生が、保障すべき権利ではなく、財源の問題を説明していた。
説明的文章を読む時には、筆者の問題意識を理解した上で、意味段落ごとの内容とその関係性を捉えることが重要である。
【三】
①規模の「模」、④唱えるの「口」、⑤奮いの「大」、⑦「除幕式」の「除」「幕」において誤答が多く見られた。①と⑦は主に同音異義語による間違いであり、④と⑤では書き間違いや覚え間違いと考えられる回答が多数を占めた。漢字学習の際に、他の漢字との差異を正確に学習する必要があると言えるだろう。